ECD「プライベートレッスン」、MURO「キングオブディギン」、デブラージ「ゲットーファンク」、田我流「墓場堀士」。これらはラップレコードのタイトルではなく、ミックステープのシリーズ名だ。
ヒップホップというとラップのイメージが強いかもしれないが、これはラップ、DJ、ブレイクダンス、グラフティアートの4大要素から構成されるカルチャーの総称であり、ミックステープはDJの領域に含まれる。
以下はECD「プライベートレッスン1」のトラックリストである。
01.ひかりのなかに/岡崎広志・伊集加代子
02.夢みた私/西城慶子
03.ブルー・ハワイ/岡崎友紀
04.風鈴の佐吉/中村敦夫
05.サマータイム/三上寛
06.ひとりのふたり/天知茂
07.星が云ったよ/安藤昇
08.二人の鏡/山本圭・佐藤オリエ
09.宇宙の彼方に/ザ・ハイウェイズ
10.月と星のバラード/倍賞千恵子
11.白い旅/浅丘ルリ子
12.哀しみの中に/ユリ珠美
13.エピタフ/ザ・ピーナッツ
14.千年王国/森下登喜彦
15.カールの歌/三橋美智也
16.砂のお城/ザ・ランチャーズ
17.おもちゃのチャチャチャ/中野慶子
18.失われたもの達/ROW
19.時計をとめて/草間ルミ
20.じゃましないでね/越路吹雪
21.水に流して/丸山明宏
ミックステープを買い始めた1997年頃、MUROの「キングオブディギン」のテープがヒップホップなのかわからなかった。ラップが1曲も入っていなかったから。
少し経って、それがネタモノというやつで、間違いなくヒップホップの文脈の上に成り立っていることを理解した。
では「プライベートレッスン」はどうだろうか。ECD本人はヒップホップだなんて言われたくないのだろうけど、これはやはりヒップホップのアートフォームだ。
それまで単体で存在し、時に忘れ去られていた楽曲達が、DJのミックスという行為によって曲と曲のつながりの中に新たな意味を持ち始め、その価値を取り戻す……
最近、手塚治虫のブッダを読み直した。シッダルタが悟りを開くのは文庫版の第6巻の後半である。さわりはこうだ。
シッダルタ「この世に幸福な人間なぞありはしない!」
大男「みんな不幸 そんならなんで人間はこの世にあるんだ………」
シッダルタ「木や草や山や川がそこにあるように 人間もこの自然の中にあるからにはちゃんと意味があって生きているのだ あらゆるものとつながりを持って…… そのつながりの中でおまえは大事な役目をしているのだよ」
大男「この お おれがか……… このオレに役目があるって?この役にも立たんオレが?」
シッダルタ「そうだ もしおまえがこの世にいないならば何かが狂ってしまうだろう」
—中略—
シッダルタ「私があの男にしゃべったことばは私が自分自身に教えたんだ!おお………私の心のとびらがいま開いたぞ‼光よ 光よ 光よ!私の前を照らしてください 私は命のかぎり果たします この宇宙の中の私の役割を!」
即ち「カールの歌」が大男で「プライベートレッスン」が宇宙ということである。ミックステープは、神羅万象の理をあらわす。
【私のミックステープ10選】
KING3LDK / GOOD TIMES Vol1
MURO / diggin’ice summer of’96
DJ KENSEI / ILL VIBES STRAIGHT FROM TOKYO VOL.2
D.L / FREEDOM JAZZ FUNK Mellow Storm
DJ Mitsu the Beats / 28ROSE
CQ / FLYING CQ #3 LOVE SIGN
須永辰緒 / Organ b.SUITE No.1
DJ SEIJI / 1996
BIZ MARKIE / THEORY OF OLD SCHOOL
DJ KIYO / HIGHER LEVEL VOL.3
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Summereyes(サマーアイズ)
東京都練馬区在住。
さんピン世代の老B-BOY。趣味はレトロゲーム。
2015年にミックステープ「BRING THE PAIN」
をリリース。
香ばしすぎるレトロゲームに挑戦する
YouTubeチャンネル「STINKY RETRO GAMES」
を鋭意更新中。
http://urx3.nu/AHka
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掲載日:2022年2月24日